TwitterやYoutubeなどを見ていると、”VIX指数(恐怖指数)”を取り上げて、株価下落の可能性について触れるシーンをよく目にしますが、このVIX指数とは何なのでしょうか?
今回の備忘録では、①VIX指数とは何なのかを確認したうえで、②それがどのように算出されているのか、そして最後に③VIX指数をどのように見ればいいのかについて書き残していきます。
VIX指数とは
VIX(ビックス)指数とは”Volatility Index”の略で、恐怖指数とも呼ばれたりします。
”Volatility”とは「変動率」のことですから、VIXとはこの変動率の指数のことをいうわけです。
なので、VIXが騰がると変動率が上がるということになり値動きが激しくなる(相場が不安定)と考えられるのです。
「VIX指数の上昇=相場の不安定さによる不安度合も上がる」
これが投資家の多くで意識されることなのです。
そもそもどういう風に算出されているの?
では、変動率とはどのように計算されているのでしょうか?
VIX指数はS&P500指数のオプション取引の値動きをもとに算出・公表している指数であり、VIX指数が高いほど投資家が不安に感じていると考えられています。

??...どういうこと?
まず、オプション取引について整理が必要です。
オプションとは、「ある特定の商品をあらかじめ定められた期日までにあらかじめ定められた価格で買うまたは売る”権利”」のことです。
そして、ある商品を”買う権利”のことを「コールオプション」といい、”売る権利”のことを「プットオプション」といいます。
オプション取引では、コールオプションの買い・コールオプションの売り・プットオプションの買い・プットオプションの売りの4種の取引が実施されることになります。
細かい内容は備忘録内容から離れてしまうのでここまでとしますが、
大切なのは各オプション取引を行う投資家の論理とそこから見える心理です。
●コールオプションの買い
(投資家の心理)
投資家はある金融商品が近いうちに値上がりすると考えている。
私はコールオプション(「A株を1,000円で買う権利」)をオプション料100円で購入。
定められた期日までにA株価が1,100円を上回っていれば権利を行使して私は友人からA社株を買い、下回っていれば権利自体を放棄する。
●コールオプションの売り
(投資家の思考)
投資家は保有しているある金融商品は近いうち値下がりするものと考えている(コールオプションの買いと逆。)。
私はコールオプション(「A社株を1,000円で買う権利」)をオプション料100円で友人に売った。
定められた期日までにA株価が1,100円を上回ったところ、友人は私にA社株を1,000円で買う権利を行使してきたので、私はA社株を1,200円で調達し、1,000円でA社株を友人に売った。(私は1,200円の株を1,000円で売ったので、受け取ったオプション料とを差し引き100円の損失が発生)
もし定められた期日にA株価が1100円を下回っていた場合、友人はコールオプションの権利を放棄、私はA社株を売れずにそのままA社株を保有することとなる(お金の動きとしてはオプション料100円の利益が発生)。
●プットオプションの買い
(投資家の思考)
投資家はある金融商品が近いうちに値下がりすると考えている。
私は1,000円のB社株が値下がりすると考えたので、オプション料100円を支払ってプットオプション(「B社株を1,000円で売る権利」)を買った。
定められた期日までにB社株価が800円となった場合、私はB社株を800円で購入し、B社株を1,000円で売る権利を行使した。(私は1,000円でB社の株を売ることができたので、オプション料100円とB社株の購入価格800円を差し引いた100円の利益が発生)
逆に、定められた期日までにB社株価が値上がりしたような場合には、「B社株を1,000円で売る権利」を行使せずに放棄できる。(オプション料の支払いのみ)
●プットオプションの売り
(投資家の思考)
投資家はある金融商品が近いうちに値上がりすると考えている。
私は1,000円のB社株が値上がりすると考えたので、オプション料100円を受け取りプットオプション(「B社株を1,000円で売る権利」)を友人に売った。
定められた期日までにB株価が1,100円を超えた場合、友人は「B社株を1,000円で売る権利を実施」を放棄する。(私はオプション料100円の利益を得る)
逆に、定められた期日までにB株価が1,100円を下回り、800円となった場合、友人は800円でB社株を調達し、「B社株を1,000円で売る権利」を行使して私はB社株を1,000円で買うことになります。(この結果、私は800円の株を1,000円で買うことになり、受け取ったオプション料100円を差し引いた100円の損失を被ることになります。)

オプション取引の具体的な場面をイメージするとよいですが、投資家の心理としては、こうなります。
①コールオプションの買い⇒投資家は値上がりすると考えている
②コールオプションの売り⇒投資家は値下がりすると考えている
③プットオプションの買い⇒投資家は値下がりすると考えている
④プットオプションの売り⇒投資家は値上がりすると考えている
ちなみに、①と④は、値上がりを考えている投資家が金融商品を買うという点で一緒のように思われますが、①はオプション料を支払い、権利行使を決定できるのに対し、④はオプション料を受け取り、取引相手が権利行使を実施すればそれに応じなければならないという点で、立場が全然違います。(②と③も同様のことがいえます。)
さて、話をVIX指数に戻します。
VIX指数は、30日後のS&P500の価格予想を示すSPXという商品のオプション取引(コールオプション・プットオプションの売買)の状況から導き出されたものなのです。
さきほどのオプション取引の話を持ち出せば、SPXという商品のコールオプション買いやプットオプションの売りが多い時、投資家はS&P500指数に対し不安は少ないと考えられますし、逆にコールオプション売りやプットオプションの買いが多い時は、投資家のS&P500指数に対する不安は大きいと考えられるのです。
つまり、VIX指数というのは投資家の心理を映し出すと考えられるSPXのオプション取引に基づいて算出されているものなのです。
データ元がオプション取引に起因するものなので、だましのようなものも存在しますし不安が大きいから常に株価が下落するというわけでもない点には注意が必要です。
あくまで、”データからは投資家は相場の先行きに不安を抱えていることがうかがえる”という程度に考えた方が良いでしょう。
着目すべきポイントは?
VIX指数からは投資家の相場への警戒度を読み取る
VIX指数が投資家の相場の先行きの不安という心理状況を示すものであるとすれば、VIX指数が急騰したような場合には警戒すべきサインを立てるときかもしれません。
一般的に、VIX指数は10~20の間で動いており、30を超えると警戒すべきと考えられています。
しかし、個人的にはこの”警戒すべき”というのがよく分かっていません。
いったい何を警戒するのか?暴落を警戒するというのでしょうか?

上のチャートはTradingViewから切り取ってきたもので、青線がVIX指数を、オレンジ線がS&P500指数を示しているものですが、VIX指数が30を超えたときにどう警戒していいか分かりますか?
コロナショックのあった3月付近なんて常にVIX指数は30超、たしかにこの時期に株価の底をたたいていますが、この時期に買い付けをしていればかなりの利益を出せていたはずです。
VIX指数が上昇したときに示されるのは投資家の心理状態も示しますが、その心理状態が生み出すのはボラティリティ(変動幅)です。
ということは、これは下落する可能性もあれば上昇する可能性もあるということなので、あまりこのVIX指数にとらわれすぎるのはチャンスを逃すと個人的には考えています。
正しくは、VIX指数で投資家の警戒度を認識し、他のテクニカル分析ツールも駆使しながらキャッシュポジションを高めるかどうかの判断をする程度のもので良いのではないかと考えています。
「VVIX指数÷VIX指数」も重要?
ここまで、VIX指数について書き残してきましたが、VIX指数に関連してもう一つ重要なものがあります。
それが、「VVIX指数/VIX指数」といわれるものです。
VVIX指数はVIX指数の30日後の予想ボラティリティで、VIX指数の予想値が上がるとVVIX指数も高くなります。
これまでに出てきたVIX指数と発想は同じです。VIX指数はS&P500指数のボラティリティが大きくなると予想されると高くなりますが、VVIX指数はS&P500指数ではなくVIX指数のボラティリティに着目しているのです。
高橋ダンさんは、このVVIX指数とVIX指数を組み合わせた「VVIX指数/VIX指数」がS&P500指数の先行指数となると言っているのです。

青線が「VVIX指数/VIX指数」で、オレンジ線がS&P500指数ですが、たしかにコロナショック時の推移をみると「VVIX指数/VIX指数」の方がS&P500指数に先立って底を打っているのが分かります。
しかし、コロナショック後の推移はどうかというと、「VVIX指数/VIX指数」が下落したのと同時にS&P500指数も下落しているという動きも見受けられるので、「VVIX指数/VIX指数」がS&P500指数に完璧に先立っているとまでは言えなさそうです。
とはいえ、「VVIX指数/VIX指数」とS&P500指数との相関性は非常に高く無視することはできそうにありません。(画像は省いていますが、過去の比較チャートを見ると大きな急落を見せるときにはS&P500指数に先立った動きを見せているようにも思えます)
少しTradingViewで見てみて思ったことなのでこれから試していきたいことですが、「VVIX指数/VIX指数」とMACDのトレンドが割とハマっているように思えるので短期投資ではこの2つの道具を活用するのが有効のようにも思えます。

「VVIX指数/VIX指数」についてはどこまで先行指数ととらえるべきか悩ましいですが、VIX指数の意味を知ることで分析の仕方もまた変わると思います。
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